今日は引越しです。
★多麻家の引越しの日 

-都心のマンションから郊外の中古住宅に越してきた乱蔵ファミリー。
 母(おトキ)が入居している特別養護施設の近くに転居しました。
 母の見舞いで、しばしば訪れていた街ですが、都会と違う長閑な風景が嬉しいようですね。-


      
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 

【乱蔵】ここまでは何度も足運んだけれど、つくづく空気が違うねえ。
 
【お蘭】でも、畑や雑木林がある風景なんて、久しぶり・・・。あ、これから毎日・・ね、。

【田万里】今日、おばあちゃんに会いに行っていい?

【お蘭】引越し蕎麦食べてからね。

【乱蔵】タマリはばあちゃん好きだからなあ。おフクロも喜ぶね。

【環】ママ。僕の学校、大丈夫?

【お蘭】大丈夫よ。吹奏楽部の顧問の先生にも会っているからね。

【環】今度の学校は、銀賞とっているからレベル高いみたいだよ。

【乱蔵】タマキは楽器のことばかり考えているからなあ・・・。

【お蘭】勉強も、嫌いじゃないんだから、いいじゃないの。

【乱蔵】前の学校も、そう遠くはないから、友だちに会いたくなったらすぐ会えるよ。

【環】うん・・・・。

【田万里】ママ、お蕎麦早く食べようよお・・・。

【お蘭】そうそう、片付けは後回し。ざるそば食べましょう。パパ、玄関から持ってきて。

【乱蔵】はいはい。

-下調べは大得意の乱蔵が、駅近くのおいしい蕎麦屋「長寿庵」を発見してあり、さっそく引越しそばを出前してもらったのでした。-


【田万里】パパ。このお蕎麦おいしいね。

【乱蔵】この昆布出汁の味が最高。ううっ・・・。懐かしい味だなぁ。

【お蘭】出前で昼食なんて、昭和のちょいゼイタクみたいで、うれしいわっ・・・。

【環】もぐもぐもぐ・・・・・。ズズズ・・・・。ごちそうさん・・・。

【田万里】タマキ、早っ・・・・。

【環】ママ、お腹すいた。

【お蘭】足りないのはわかるけど、夜お寿司とってあげるから、明るいうちに部屋片付けなさい。

【環】】寿司っ!! OK、OK。じゃ、2階行くね!

【田万里】じゃあ、あたしも・・・。残り、パパ食べていいよ。

 二人の子供は、自分たちの部屋になる2階に駆け込んでいく。バタバタと激しい足音。
 戸建てのマイルームは初めての二人は、部屋のセッティングに大興奮のようです。

【お蘭】ア・ナ・タ、台所任せたわよ。

【乱蔵】ん?・・・。あ、はいはい・・・。
 
-妙に色っぽい声を発したお蘭に乱蔵、ドキッとしました。
 お蘭はいそいそと、1階の寝室を片付けに入る・・・・。
 旅先でもそうだが、環境が変わった時の妻は「オンナ度」が高まるようですね。

 まあ、リビング周りは家電や、重いものが多いので乱蔵の出番なのだか・・・・。-

【プリン】ウォン、ウォン・・・。

【乱蔵】あ、プリンちゃん。お腹すいたか。待ってれ。すぐ餌あげるよ。

-乱蔵は、ゲージの中で家族の様子を見ていたチワワのプリンをひと撫ですると、
すぐにペットフードを皿の中に注いであげます。-

-夕方までに何とかひと片付けした乱蔵は、お蘭とタオルの包を持ってご近所に挨拶周り。
 そのまま、子供たちと共に、老人ホームの母を訪れました。-

【田万里】お祖母ちゃん来たよ。

【おトキ】おお、タマリ・・・。

【乱蔵】母さん、越してきたよ。もう、いつでも会えるからね。

【お蘭】お母さん、ご安心下さい。とってもいいお家ですよ。

【おトキ】タマキはいい男になったねぇ。

【環】ははは・・・・。

【おトキ】学校はどうなのかい?

【環】あさってから行くよ。大丈夫さ。吹奏楽部あるし・・・。

【おトキ】タマリは?

【田万里】うん、フリースクールは変わんないから。平気・・・・。

-4人で帰りの道を歩いています。閉まっている店は多いですが、それなりの商店街があり、ケヤキやイチョウの木立もあって、郊外のほのぼのとした空気が心地よいです。-

-こどもたちを先に帰して、乱蔵とお蘭は酒屋でビールを買い込んでいます。
 お蘭はやたらツマミを選んでレジに山盛りしているのを横目に、乱蔵がビールの銘柄を選んでいると、お蘭が駆け寄って来ました。-

【お蘭】ア・ナ・タ。今日は「エビス」でいいわヨォ・・・。

 エビス・・・。
 新婚旅行で飲んだ時の晩酌がエビスでしたぁ。

-夕暮れの帰り道に寿司屋で出前の予約をして、新居の帰路に向かう乱蔵夫婦。何だか興奮しているお蘭が乱蔵の肩にもたれ掛かってくるのを、恥ずかしさも忘れ胸がキュンとなりながら、歩を進める乱蔵でした。-

   
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