今日は、お蘭さんの
お父さんの誕生日。
★デフレに挑戦のお店 
 
アンの工房 立川幸店

-誕生日ケーキを買うのに、予算が少なくて困っていたタマリちゃん。
母方の祖父の誕生日に自分でケーキをどうしても持って行きたかったのでした。-


      
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
   
   
 
 
   
   
 
   
   
   
   
 
 
  
 
 
 
   
     
  

 ある日、田万里がネットで「食べログ東京」を見ていたときに見つけた「アンの工房」。このケーキ屋さんは、立川市内だけでも数軒あるということで、ママの車で行く途中で立ち寄れるかどうか、ルートを調べてみたのです。

 実は祖父の誕生日ケーキは毎年タマリが手作りしているのですが、今回はフリースクールで、「めったにないイベント」の準備が重なり、作る時間がなくなったので、弟の環とお小遣いを出し合い、その予算内でおじいちゃんにケーキを買って行くことになりました。

 彼女が心配したのは、大人じゃないけども、「安かろう、悪かろう」---なんです。
 でも、父の乱蔵が仕事の関係で、この店でケーキを土産に買ったことがあるらしく、お客さんと一緒に食べたときは「結構いけた」ということでした。-

-愛車「日産マーチ」を走らせるお蘭さん。多摩地区の道もだいぶ慣れてきました。-
-立川通りの砂川9番を過ぎて、けやき台小西交差点を右折すると、AOKI幸町店を過ぎ、幸町3丁目交差点を過ぎると右手に「でんきのセキド」が見えました。-

【田万里】ママ、右にセブンが見えたから、その手前で停めてね。

【お蘭】はいはい。・・・・へぇー、かわいらしい看板ね。パパはよくこんなとこで見つけたものだわ。あの人、いつも行き当たりバッタリ・・・だけど・・。

-チェーン店というより、自家製ケーキ屋さんという雰囲気に、心が和む母娘です。-

【田万里】100円ケーキって言うから、そういうのもたくさんあるわ。

【お蘭】けっこうバラエティーじゃない。私はマロンが好きだけど、おじいちゃんはフルーツが多いケーキがいいかなぁ・・・。

【田万里】できれば、デコレーションがいいんだけれど・・・。縦長のケーキでも、量は足りるから、どうなのかなぁ・・・。

-タマリちゃんがショウケースを眺めていると、デコレーションはマロンケーキと、イチゴケーキの大きいサイズだけで、他には「空き」になったスペースしかありません。-

-タマリちゃんは、予約していたわけではないので、まあ、「運に任せていた」のですが・・・・・・・。-

【田万里】(おやっ・・・・・。)

-うしろの工房から、できたてのデコレーションケーキが運ばれてケースに収められていきます。ひとつ、ふたつ・・・。-

【田万里】(あっ・・・・・。フルーツいっぱいのせのケーキ。・・・1,800円!) ねえ、ママ・・・。ママ・・・。

-早く、早く・・・と、うしろのクッキーのコーナーで品物を眺めていたお蘭さんを手招きするタマリちゃん。・・・・。「何々・・・」と近寄ってくるお蘭さん・・・。

【お蘭】うーん、ビンゴじゃない・・・。お安いし、見た目もカワイイっ・・。

【田万里】あのー・・・・。これください。

【お蘭】(おっ、決断早っ!!・・・うーんいい傾向だわぁ。)

-外では内気なタマリですが、大好きなおじいちゃんのため、早く買わないと売れちゃう・・・・とあせったみたいですねぇ。-

-でも、店員のお姉さんが優しく微笑んで、ローソクの好みとか、ラッピングの好みを尋ねるのに、案外ハキハキ受け応えできたタマリちゃんでした。-

-そして、車の中で・・・。-

【お蘭】「アンの工房」って、昔のケーキ屋さんを思い出すわ。

【田万里】ふーん、「昔の・・・・」って。

「ナウくない」けど、「懐かしい」って感じ。

【田万里】
「ナウいって何?」

【お蘭】今風・・・ってのかな。

【タマリ】「アン」って、あの「赤毛のアン」のことかなぁ・・・。

【お蘭】ふふふっ・・・。きっとそーねぇ。みなしごのアンが、どんどん幸せになっていく物語よ。

【田万里】ああっ・・・。昔、一回だけ読んだことあるよ。

【お蘭】友達のダイアナっていうのが、まあ、今で言う「天然」なタイプで、まあ、アンも天然だけど、
普通っぽい天然なのね。私、アンよりダイアナの方が親近感あったなぁ・・・。

【田万里】ママも天然だけど・・・・。むしろ「野生」かなぁ・・・。はははは・・・・。

【お蘭】「野生」とはナニよぉ・・・。失礼しちゃうわねぇ。

【田万里】だって、自分でも
「肉食系」とかいってるじゃないのぉ・・・。

【お蘭】まあ、否定しないけど、ムスメに言われると、ちょいとムカつくわねぇ・・・。

-仲良し喧嘩みたいな会話をしているうちに、母方の実家に着いた母とムスメです。-

-娘と孫が誕生日に訪れてくれて、大喜びの祖父母です。茶の間で、タマリが買ってきたケーキのローソクに灯がついています。-

【お蘭の父】ははは・・・・。いゃあ、ありがたいねぇ。娘と孫に祝ってもらうなんて・・・。

【お蘭】お父さんは、和菓子のほうが好きだったんじゃない?

【お蘭の父】そ、そんなことは・・・・。おおっ、タマリはワシがフルーツが好きなの、よくしっとるねぇ。

【タマリ】おじいちゃんは、桃の缶詰が好きだったよね。

【お蘭の母】あれはね、学童疎開から帰ってきたときに初めて食べた「ぜいたく品」だったんだよ。

【田万里】学童疎開ってぇ、なに?

【お蘭の父】空襲が多くなって、東京にいると危ないからって、子ども達が田舎に避難していたんだ。

【田万里】爆弾でも落ちてきたの?

【お蘭の父】そうだよ・・・。空襲警報が鳴って、防空壕に逃げ込むんだ。B29の音は今でも忘れられないよ。

【お蘭の母】私も、東京が焼け野原になって、ああ・・・どうなるのかな・・・って思ったわよ。

【お蘭の父】去年の津波で流された東北の町を見て、昔の東京を思い出したなぁ・・・・。

【お蘭の母】ほんとに・・・。気の毒なことでね。

-祖父がローソクの灯を元気よく吹き消すと、みんなで「おめでとう!!」と拍手です。-

【お蘭の父】ほう、最近のケーキはあんまり甘くないんだなぁ。

【お蘭】お父さんはなんだか、物足りないんじゃないの?

【お蘭の父】いやいや、そんなことはないよ、お蘭。・・・・おいしい、とても、おいしい・・・よ。

【お蘭の母】私たちは、ものが何にもないときに子どもだったから、甘いものなら思い切り甘くないと、ぜいたくな気持ちにならないこともあるのね。砂糖のとりすぎは良くないことはしっているわよ。

【お蘭】ワタシ、この味はとてもおしゃれだと思うわ。クリームおいしいわよ。

【田万里】うん、うん・・・・。

-おじいちゃんは、ケーキを食べながら緑茶を飲んでいます。-

【お蘭の父】わしゃ、ケーキに日本茶というのが好きなのさ・・・。タマリもやってごらんな。

【田万里】へぇーつ、なんか今っぽい・・・。かっこいいかも?

【お蘭】グリーンティーはグローバルの時代だものねぇ。むしろ、カッコいい・・・かぁ。

【お蘭の母】わたしゃ、ケーキの時は紅茶とレモンだね。

【タマリ】おばあちゃん、その四角いお砂糖、面白いね。

【お蘭】角砂糖・・・・よ。あなた知らなかった?

【田万里】うーん・・・。あんまり見たことない・・・ね。

-タマリちゃんは、ケーキが終わると、居間でペットの猫としばらく遊んでいましたが、台所からおばあちゃんが呼んでいるので、ダイニングに向かいました。猫がタマリのあとをついてきます。-

【お蘭の母】タマリや。この漬物食べてごらんよ・・・・。

-と、おばあちゃんが出してくれたのはピカピカのカブの漬物です。-

【お蘭】うわぁ、ひさしぶりぃ・・・。私も頂きマース。

-おばあちゃんが入れてくれたお茶を飲みながら、自家製の漬物をつまむ母娘です。-

【田万里】ママ、売ってるのより、おいしいよぉ・・・。バリバリ・・・・。

【お蘭】そーなのよねぇ・・・。これはお母さんのマネできなくてアタシ・・・。うーん、おいしい。

-気をよくした婆ちゃんは、昨日の残りと言いながら鉢に「煮物」をよそってきてくれました。-

【お蘭】オー、マイ、ガット!!おお、これぞ
「お袋の味」だわぁ・・・。

【田万里】これっ、おいしい・・・。ママもこういうの作ってよぉ・・・・。

【お蘭の母】そんなら、タマリに教えちゃったほうが早そうだわ・・・。

【お蘭】おねがいしまーす。母上さまっ・・・。

【田万里】おねがいしまーす。おばーちゃまぁ。




-帰宅途中のマーチの車内です。-

【田万里】おばあちゃんの漬物と煮物サイコーだったね。

【お蘭】売ってるものと違うんだよねぇ・・・・。かあさんの味付けっていうのはぁ・・・。

【田万里】何が違う・・の?

【お蘭】うーん、うーん・・・・・。なんだろ?レシピがどーたらの話でもないしぃ・・?

-自宅のリビングです。子ども達は2階の部屋に・・・。乱蔵が湯上りのビールを飲んでいます。
お蘭さんの母が帰りに持たせてくれた、「カブの漬物」と「煮物」がタッパにたっぷり入れてあります。--

【乱蔵】うーん、この煮物は絶品だねぇ・・・。

【お蘭】この味は母さんにかなわないわぁ。

【乱蔵】むむっ・・・。これぞ、漬物。カブってうまいわぁ。日本人でよかった。

【お蘭】私が妻でよかった・・でしょ?

【乱蔵】おお、そーとも。こんなおいしい、漬物と煮物が作れる母さんのいるお蘭が妻でよかったぁ。

【お蘭】褒められている気がしないわぁ・・・。

【乱蔵】褒めてるじゃないかぁ・・・・・。

【お蘭】だって、母さん・・・がぁ。

【乱蔵】もっと若くなってきれいになって、お蘭になったのだぁ・・・。

【お蘭】もーっ、漬物と煮物っ・・・。

【乱蔵】・・・は、もらってこれるからありがたや〜。お蘭が妻でありがたや〜。

【お蘭】だからーっ。煮物だってばぁ・・・。

【乱蔵】
俺はキミの「煮物」じゃないかぁ・・・。

【お蘭】・・・・?よくわかんないけど、そんな気もするわぁ。
・・・じゃ、「漬物」は?

【乱蔵】
コリコリしてうまいねぇ。

【お蘭】ははは・・・。さすがにアナタはもう、こりこりしてないわよ。

【乱蔵】「気づけない、
隠し味」があるんだなぁ・・・。

【お蘭】・・・おホホ・・・・・・・。ブンガク的・・・かも。ね、ダーリン・・・。



   
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